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卒業式 式辞

2021-03-01校長先生から

日差しに春の気配を感じる季節となりました。

皆さんは、約一か月ぶりの登校ですが、この間、多くの生徒が受験に挑みました。まずは人生にとって大きなハードルを乗り越えようとしてきた、その努力に敬意を表します。

今年度の三年生は、最終的には見送られたものの、いわゆる大学入試改革の初年度で、また、北海学園併設校推薦試験制度の変更もあって、例年以上に緊張感を持って学習活動に向かってきた学年でした。今年度になってからは、新型コロナウイルス感染予防のため、新しい生活スタイルを踏まえながら、自分自身で時間をマネジメントしなければならない状況が長く続いてきましたが、それは結果として、皆さん自身が「自ら学ぶ」ということに対し、正面から向き合えるきっかけになっていたものではないかと考えます。

皆さんは「自ら学ぶ」ことの本当の価値を知り、自分にとって必要なものを優先的に考え、北海生らしく、ひたむきに目標に向かってこられました。そんな皆さんの実力は、皆さんが思っている以上のものです。ここまでの自分に、もっと自信を持ってもらっても結構だと思います。

さて、ただいま卒業証書を授与した第73期生521名の皆さん、改めて卒業おめでとう。私たち教職員もこの上ない慶びでこの時を迎えています。

卒業生の皆さん、今日の日を迎えるに当たり、北海高校での生活の様々な思い出が蘇ってきているのではないかと思います。私自身も二年前まで、一担任として直接かかわりを持たせてもらった経験から、先日、そのころに撮った写真を見返しました。今年度、コロナ禍で様々な困難と向かい合ってきた一年間とは違い、北海祭や体育祭、支笏湖遠足、弁論大会など北海高校ならではの学校行事におもいっきり取り組み、心から溢れる笑顔をそこに観ることができました。当時の皆さんは、まだまだ上級生の力には及びませんでしたが、明朗快活で、互いの個性を認め合える学年として主体的に行動し、一年次から職業観や学問観の向上と進路の探究にコツコツと取り組んでいたことが、とても印象深いです。二年生の終わりに、この体育館で行われた修学旅行後の沖縄に関する事後研究発表会も、バリエーションが多く、レベルの高いプレゼンテーションをしていたことなどが蘇り、改めて皆さんの成長を感じました。

北海高校には、毎年、実に多様な生徒が集まります。

皆さんはその出会いによって自分自身というものを理解し、日常生活にとどまらず、部活動にも積極的に取り組み、多くの経験を通じて、新たな発見と思考を繰り返してこられました。その経験は、これからの時代を生き抜く力として蓄えられてきたものであり、必ず今後、皆さんが社会で逞しく生きていくための土台になってくれるものと、私たち教職員は強く信じています。

北海高校は、有為なる人材育成を目的に、1885年(明治18年)に開かれた学校です。いかなる苦境をもこれを排除して、何事にも屈することなく前進する「百折不撓」と「質実剛健」の建学の精神を大切に、基礎学力の修得と、時代にあった主体性・柔軟性を兼ね備えた若者を育成することに全力を傾けてきました。すなわち皆さんは、ここにいる多様な教師と友人との出会いの中で、心身ともに鍛えられ、互いに励まし合いながら切磋琢磨するという伝統を身につけてきたことに他なりません。

卒業を一般的な英語では“graduation”と言いますが、もう一つ卒業を意味するものに“commencement”があります。これには「始まり」という意味もあり、「学業には終わりはない」ということをよく表している言葉であると感じます。つまり、卒業とは「終わり」ではなく「始まり」です。では何の始まりかというと、私は皆さんに「生涯教育」の始まりであると捉えてもらいたい。皆さんには、北海高校で過ごした実感を大切に、これからは専門性や教養を身に付け、その知性を基に「自分の課題」に対して、納得できる解決方法を見出せるよう、「生涯、自分で自分を教育し続けていく」その覚悟をもって欲しいと願います。

今、世の中を見ると、世界中が混沌としています。自然災害、様々な格差の広がり、そして新型コロナウイルスに関しても医療体制への懸念、経済の先行きなど多くの課題が交錯し、各々の正義が飛び交っています。変化が激しく複雑で、より多様化している状況は、今までとは比べものにならないスピードで進み、もはや前例主義では立ち行きません。正直、「正解はない」といってもよいでしょう。これらの答えを見出すことは簡単ではありませんが、考え方は、シンプルでよいのだと思います。

一つは「学び続けるという意欲を絶やさないこと」。そしてもう一つは、「自分の信念に従う」ということではないかと思うのです。

信念とは、自分の中で何度も繰り返されているうちに、自分の一部となった思考のことでもあります。信念を持つ人は、自分に対して厳しい姿勢を保ち、自分の信念に従うことは、誰に対しても「正しいことをする」ということに他なりません。己を飾ることなく誠実で、他者のことを思いやる気持ちを持ち続けられることが一番です。

最後に言葉を一つ紹介します。

「かっこ悪くたっていいのだ、かっこ悪さを恐れてはいけない 恥ずかしがってはいけない、どんなかっこうでも真剣に生きる姿は美しい。」

この言葉は、黒澤明監督作品の常連俳優として活躍した千秋実さんの言葉です。千秋さんは、北海中学の卒業で、当時は陸上部に所属し、第二の南部忠平と有望視された大先輩です。怪我が原因で陸上は続けられなくなりましたが、「映画」と出会いました。戦後の芸術、文化の解放に伴い、「大衆に共感を呼び、社会に訴える」作品づくりに情熱を傾け、後にハリウッド映画にも影響を与えたと言われています。

この言葉には、千秋さん自身の信念とそれを貫こうとした生きざまが現われていると思います。そしてそれは、北海に学び、「質実剛健」の精神がバックボーンになっていることも強く感じます。

実は、今年度、北海高校陸上競技部は創部百周年という年を迎えていました。この節目に、もし千秋さんが、卒業する皆さんへ、「生き方のヒントになるメッセージ」を贈ってくれるのだとしたら、という思いでこの言葉を紹介しました。

ぜひ、皆さんにも本校で学んだことを誇りとして、内面を充実させた人格者になってもらいたいと心から思います。

結びとなりましたが、保護者の皆様に一言申し上げます。保護者の皆様、改めてお子様のご卒業おめでとうございます。お子様の成長を願って支えていただいた皆様には、さぞかしご苦労も多かったと存じます。また、コロナ禍における教育活動では、多くのご迷惑、ご心配をおかけしてしまいました。にもかかわらず、この三年間、北海高校の教育活動にご理解とご協力を賜りましたことに心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

卒業生の皆さん、そしてご家族の皆様のご健康と益々のご発展を祈念して、以上式辞といたします。

令和3年3月1日     北海高等学校長 秋山秀司

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