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【講話】夏休み明け全校集会 校長講話

2022-08-22校長先生から

 皆さんおはようございます。今朝、久しぶりに皆さんの元気な挨拶を聞けてとても嬉しく思っています。休み中、全国大会をはじめ各種大会に参加した生徒の皆さん、また、Sクラス、特進クラスでは恒例の10時間耐久学習会も実施されましたが、計画的に学校を利用して勉強に励んだ生徒の皆さん、ひとり一人の北海生が充実した夏休みを過ごしてくれたと思っています。学校生活再開に当たり、何事にも精一杯やりきった皆さんの努力と健闘を改めてここで称えます。次に、コロナ関係でのお願いがあります。
 第7波の感染拡大は、感染者数が高止まりの状況にあります。それでも行動に制限なく活動するには、最も基本的な感染対策を厳守するしかありません。とくに手洗いの徹底とマスクの使い方が重要だと思います。屋内外、感染リスクが高いのはどのような場面か、マスク着用の正しい判断は、個々人が責任を持って把握し実践する必要があります。今後の活動と私たちや家族の健康のためにも、油断をしないで取り組んでいきましょう。
さて、休み中は、原爆の日、終戦記念日などもあり、今年も戦争と平和について考えさせられました。今年、この点における皆さんの意識はどうだったでしょうか。
 今から77年前の8月6日、人類史上初めて原子爆弾が投下されました。その犠牲者を慰霊するため広島平和祈念式典が行われました。私は、テレビで今回の式典をいつもとは違う緊張感を持って観ていました。最近、核への恐ろしさを本当に身近に感じるようになっていたからです。
 今年1月、アメリカ、ロシアなど、核保有5か国の首脳によって「核戦争に勝者はいない、決して戦ってはならない」という共同声明が世界に発信されました。しかし、その翌月には、ロシアがウクライナに侵攻し、やがて核の使用をほのめかしました。
 今年6月、核兵器禁止条約に批准した国々が集まる、初めての締約国会議がオーストリアのウィーンで開かれました。会議では、核保有国はいかなる状況下でも核兵器を使ってはならない。使う可能性があるという威嚇も許されないとする「ウィーン宣言」が採択されました。
 この会議に、アメリカの核の傘に安全保障を依存しているオーストラリアとNATOの4カ国は、オブザーバーとして参加しましたが、唯一の被爆国である日本は参加しませんでした。
 確かに、日本は矛盾を抱える国です。被爆国であり非核三原則を貫きながら核保有国の傘の下にある国だからです。ですが、世界的に核への脅威が高まる中、日本がするべきことが、今こそ明らかになってきているように強く感じます。
 この締約国会議の開催に合わせ、広島県出身の大学生、高橋悠太さんがウィーンに向かいました。高橋さんは、いま世界の若者たちと連帯し核廃絶を目指す活動に取り組んでいます。
 高橋さんのこの活動のきっかけは、中学生の時、坪井直さんという被爆者との出会いに始まります。
坪井さんは、長年、核なき世界を目指す運動の先頭に立ってきた人物です。20歳の時に被爆して、40日間、生死をさまよう経験をしましたが、憎しみを乗り越え、対話による核廃絶への歩みを昨年亡くなるまで止めませんでした。今から6年前、初めて被爆地広島を訪れた現職のアメリカ大統領オバマ氏と対面し、自らの思いを訴えたニュースは、皆さんの記憶にある人もいるでしょう。
 命ある限り言い続けた「ネバーギブアップ」。坪井さんが自分の命を使って核廃絶を訴え続けてきたものを、今は高橋さんを中心とする若い世代によって継承されています。その活動は、各国の大使館を地道に訪問するなど、今までにはない若者らしい発想によるものです。しかし、高橋さんは、核兵器を根絶するには、やはり被爆者の視点で語られることが重要であり、そのためには真実を学ぶことが急務だと話されています。実際、原爆による全国の被爆者年齢は、今年の3月末84.53歳となりました。私たちの世代が、核なき世界を目指すために、直接、原爆の体験を聞く機会は、ますます難しくなっています。戦争を知らない私たちは、原爆のこと、戦争の実相をしっかり学んでおかなければ、未来に過去の教訓を生かせないことになってしまうかも知れません。また、他国での出来事を対岸の火事として済ましてしまう想像力の持てない人間になってしまうかも知れません。私自身、核兵器そのものの存在に、大きな怒りと懸念を持っていますが、広島や長崎の人たちに寄り添えるような当事者意識に至っていないことを痛感させられています。
 今後、広島、長崎の人たちの思い、被爆者の願いを一層アピールしていくことが次の一歩になるのだと思いますが、これには、被爆体験者という特定の人たちの声だけではなく、より多くの人々が時代を超えて事実を伝えていくという姿勢が存在していることを、強く世界に示していくことが必要だと考えます。そしてそれは、高橋さんや皆さんのような若い人たちによって言語化されていくことが最も大きな力になるのだと思います。
 8月9日、長崎平和祈念式典に高校生平和大使らが「人間の鎖」を作って、自分たちの活動は「微力だけども無力ではない」と、平和活動推進の宣言がされました。
 北海高校にも戦没学生の悲痛な思いを後世に伝える「わだつみ像」が玄関横にあります。また、長く続けられている沖縄修学旅行では、沖縄戦の教訓ともいえる「命こそ宝」という言葉を学び、「命の重さと戦争は絶対にあってはならない」という意思を受け継いできています。平和の尊さを学んでいる北海生の考えもまた無力ではありません。私たちは、将来のために何をするべきか、それは一つに過去の事実をしっかりと理解することだと思います。そして、新たな時代を創世していく知恵を得るためには、いま正に皆さんが取り組んでいる勉強や諸活動の質を高め、目標に妥協することなく向かう姿勢を築き上げることです。今日からまた私たちは、日々を大切に、しっかりと丁寧に学んでいくことに努力していきましょう。期待をしています。

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